ディスクブレーキは、ディスクローターにブレーキパッドを押付け、その摩擦によって制動するものである。ディスクローターには摩擦熱に強く、放熱効果が高い素材が求められることから、自動車には鉄、バイクにはステンレス鋼製のものが主に使用される。アルミニウム製は軽量であるが耐久性や熱変形において劣るため使われることは少ない。F1やルマン・シリーズなどの一部のモータースポーツや航空機では炭素繊維強化炭素複合材料を原料としたブレーキローターが使用される。
装着する車種によっては単なる一枚の円盤ではなく、ディスクローターの表面積を確保して放熱容量と制動力をアップすることがあり、主に次のようなものがある。
- ドリルドローター
- 円盤の面に多数の穴を空ける。二輪車でよく見られる。
- スリットローター
- 円盤の面に放射状に溝を掘る。摩擦でブレーキパッドを削正する効果もあるため、スポーツカーやレーシングカーで幅広く採用されており、後述するベンチレーテッドディスクと組み合わされることが多い。
- ベンチレーテッドディスク(Vディスク)
- ディスクを2枚にしてその内側に多数のフィンを挟む。自動車や鉄道車両で見られる。
- ソリッドディスクブレーキ
- 一枚板のディスクローター、ベンチタイプにくらべ強度的に強い。
☆注意点
- ブレーキローターは使用に伴って磨耗していくので、定期的に交換や研磨が必要である。日本車では廃車まで一度も交換しないケースも多いが、欧州車のなかにはブレーキパッド交換2回に1回程度の交換サイクルを要求するものもある。
- 炭素繊維強化炭素複合材料製ブレーキローターは、適切な温度域内で使用しないと本来の性能を発揮せず、ブレーキローターの割れや異常磨耗などを発生することもあるために温度管理が不可欠である。また、一台分で300万円程度と非常に高価。セラミックスなどを付加することによって市販車にも使用できるように改良されたものがポルシェやフェラーリの一部には採用されている。炭素繊維強化炭素複合材料製ローターは専用のブレーキパッドとのセット使用が原則。
☆トラブル
- ・脈動
- ブレーキローターの偏磨耗によって、ブレーキング時にブレーキキャリパーのピストンが押し戻されることによりブレーキペダルが戻される現象。ローターの研磨や交換が必要。
- ・ジャダー
- ジャダーとはブレーキング時に発生する振動。スポーツ走行などでブレーキローターが長時間熱にさらされた場合などに発生しやすい。高熱にさらされて熱変形したブレーキローターが冷える際に一部が元通りに戻らず、変形したままの状態になってしまうことが主な原因。ブレーキローターの交換が必要。ハブベアリングの不良やブレーキキャリパー取付け部の剛性不足でも似たような現象が発生することがあるので注意。
- ・ひび割れ(クラック)
- ブレーキローターに開けられている穴と穴の間にひび割れが発生することがある。直ちに制動力に影響するものではないが、見栄えも悪くひびの拡大(最悪、割れてしまう)もあるので、早めの交換が望ましい。
- ・錆
- 降雨時や洗車時に水がかかると表面に錆が発生する。錆が発生した状態でブレーキをかけると錆によりブレーキパッドへの食い付きが良くなるため、一時的に制動力が上がり制動ショックや異音が発生することがある。これらは一時的現象に過ぎないので、数回ブレーキをかけると解消する。
- ・油分、石鹸成分の付着
- ブレーキローターに油分や石鹸成分が付着すると制動力が著しく低下する。この場合、安全な場所で数回強めにブレーキをかけて、付着した油分や石鹸成分を焼き切ると制動力が回復する。洗車時にカーシャンプーなどの洗剤を使うと、ブレーキローターに石鹸成分が付着することがあるので注意する必要がある。
この用語集はフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から転用しています。 |
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